まずは論文に関して。
僕の新しい論文の本文が5月10日にネット公開されました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_87.14080/_article/-char/ja/
この論文の概要は前のブログ記事にて記載しております。
最近はだいぶネット公開が早まっているんですね。驚きました。
そもそも心理学研究は少し前までウェブ公開すらしてなかったのになぁー。
というわけで、すでにネット公開されたので、僕のHPでも本文を公開させていただきました。
興味がある方はぜひ読んでみてください。
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えー。次の話題へ。
少し今更な感じもありますが、今年度も授業が始まりました。
例年、札幌大学で行われる僕の授業は40人程度なんですが、今年、いつも5限に行われていた僕の授業を3限にしたら、なんと140人も授業に履修してくれました。
これはなんともうれしい限り!でも、その半面色々大変です。
なぜなら、僕の授業ではある実験を実習体験する機会を設けたいからです。
実験の内容は社会的ジレンマです。
社会的ジレンマとは、個人にとって得になる行動が社会のためになる行動と一致しないことを指しており、集団場面において協力する状況の多くが社会的ジレンマを含んでいます。
よって、なんの対策もされてなければ、このジレンマのせいで、集団場面における相互協力状態が達成されるのは非常に難しいのです。
実際に、社会的ジレンマの実験をそのままやっても、ほとんど相互協力状態は達成されません。
しかし、一方で、実際の社会場面では、人間は様々な集団場面において協力しています。
例えば、実際の社会において違法駐車や不法投棄などの非協力行動は普段はあまり見ないですし、公共財のために税金を払うという協力行動を人々は日常的にとっています。
また、チームワークをさせれば人々はある程度協力するでしょう。
これらの背景には何かしらの対策や仕組みが隠れているために、協力状態が達成されているのです。
しかし、そのせいで、授業内において、『集団場面における相互協力状態は達成するのが非常に難しいよ』と口で説明しても、なかなか伝わらないんですね。
受講者がその説明を聞いても、「いやいや、集団場面でいつも協力してるよ!」とか「集団場面における相互協力状態なんかいつも達成されてるじゃん!」と、実体験からどうしても思ってしまう。
なので、社会的ジレンマの実験を実習体験させて、「集団場面における相互協力状態が達成されるのは非常に難しい」ということを体感的に学ばせるのは非常に重要なんです。
そのような方法による学習効果は、授業内容を充分に習得できるということだけに留まりません。
その実体験を元に習得する、集団場面における相互協力状態を達成させる方法は、大学生である彼らが将来、社会生活を営む上でも非常に役立ちます。
例えば、将来の職場において、彼らは、チームに所属して、チームとしての成績を出さないといけないような場面に直面するかもしれません。
そのような場面には直面しなかったとしても、少なくとも、社会に出て仕事をする上で、チームの中でうまくコミュニケーション取る能力は必須です。
また、彼らが管理職やチームリーダーになれば、部下やチームメンバーのやる気を出させて協力させなければならないという課題に直面するでしょう。
それらに何かしらの対策を講じ、問題を解決する能力の獲得は「集団場面における相互協力状態が達成されるのは非常に難しい」という根底的な知識とその理解がなければ、成し得ないことです。
それらの習得に対して、実験体験は非常に重要な役目を果たすことになるでしょう。
というわけで、僕のが受け持つ授業は「社会学」や「消費行動の心理学」という授業ですが、社会的ジレンマの実験を実習体験させることは非常に重要なことだと思っています。
なので、140人も受講者がいると大変だけど、がんばって実験体験の機会を設けたいと思います。