ここでは、僕が主要メンバーとして関わっているプロジェクトについて紹介します。
一般交換の成立に対する集団の役割を探るプロジェクト
人はなぜ一方的な利他行動を取るのでしょうか。
この問いに対して、適応論的視点(人々が特定の行動傾向や心理傾向を備えているのは、そのように振舞うことがその行為者に自己利益をもたらすからだと考える視点)からの解答となりうる概念が、一般交換(もしくは間接互恵性)です。
一般交換とは、2者間での直接のやり取りを含まない3者以上の間でのやり取りを指します。
本プロジェクトの目的は、一般交換の成立において、集団が大きな役割を持っていることを示すことにあります。
その目的に基づいた一連の研究から、複数の集団がある状況においては、一般交換を頑健に維持するためには、内集団ひいき行動(内集団の成員に対して外集団の成員よりも利他的に振舞うこと)を取る必要があることが分かりました。
ここから、内集団ひいき行動によって、一般交換の成立が支えられている可能性が示されたと言えます。
→学術論文:小野田・高橋(2013)、小野田・高橋(2016)
社会的ジレンマにおける罰の過大視
先行研究では、集団に対する協力行動として、社会的ジレンマにおける協力行動がこれまで主に取り上げられてきました。
この社会的ジレンマの協力率を上げる方法として、非協力者に対して罰を与える方法が多くの研究者により提唱されてきました。
しかし、同時に、この方法は、罰行使にコストが発生するために、罰が行使されなくなるという問題をも含んでいます。
この問題を前提とすると、社会的ジレンマは、結局、解決されなくなるはずです。
しかし、そのような予測に反して、実証研究では、罰行使の機会が存在していると、多くの人々が協力するようになるという実験結果が報告されています(e.g., Fehr & Gächter, 2002; Yamagishi, 1986; Mathew & Boyd, 2011)。
なぜこのような現象が生じるのかという問いに対する答えとして、本研究では「罰されてしまうのでは?」という罰を過剰に恐れるという心理要因(罰の過大視)を挙げました。
本研究の目的は、この要因によって、実際に罰が行使されなくとも、社会的ジレンマが解決されるという現象を示すことにあります。